大自然に魅せられて挑戦することを決意、火山島で取り組むワインづくり
大島は海洋の影響を強く受ける海洋性気候。気温の年較差や日較差が小さく、一年中温暖で湿度が高いのが特徴です。そして、雨が多く降ります。
そんな気候にも負けず、「大島産ワインを造りたい!」と三原山の牧場跡地を開墾し、ブドウづくりを始めた荻原タクミさんにお話を伺いました。
取材当日は、荻原さんが幹事を務める「シマのワイン プロジェクト」が主催するワイン用ブドウの植樹会。大人から子供まで10名程集まる中、東京都離島区メンバーも植樹会に参加させていただきました。荻原さんはなぜワイン造りの地に大島を選んだのか、その理由を聞いてみました。
「以前から大島には釣りをしによく訪れていました。大島以外にもさまざまな場所に釣りに出かけましたが、なぜか大島が一番よく釣れてしまう。そんな縁も大島を選んだ理由の一つかもしれません。
トレッキングも好きでアルプス系の山々を妻と一緒に登りましたが、大島の火山が織りなすダイナミックな地形や眼下に広がる大海原を望む雄大な景色はまさに別世界。しかも東京都心から1時間45分でアクセスできるのは、ここにしかない価値だし、本当に魅力的な場所だなと思いました。」
「元々、ワイン造りがしたいと思って長野の学校に通っていました。卒業後、同級生の多くは長野でワインを造っていたので、長野においでと何度も誘われました。
しかし、長野でワインを造っても同じ場所で採れた同じ品種のブドウからはなかなか個性を出しにくい。一方で、火山島である大島で生産されたワインが同じ棚に並んでいたら、飲みたくなりますよね!大島はそんなポテンシャルを持っている島だと思い、チャレンジしたくなりました。」
大自然に魅了され、大島でブドウ栽培を始めた荻原さん。
大島の気候は、ブドウを育てる環境として例えるならば、宝くじを引くような場所だと言います。
「開墾したこのエリア周辺は20メートル級の風が頻繁に吹くような場所ですが、風下に向かって下がる地形や周囲を木々に囲まれているおかげで程よく強風から守ってくれる上に、ブドウにとって大敵なカビが生えるのを防ぐのにちょうどいい風を送ってくれます。すごくいい土地ではあるのですが、噴火後から土壌が再生しきっていないという課題もあります。
そんなブドウ栽培に適した土地だと簡単には言えない土地を選んでしまった。選んでしまったからには栽培を成功させなくてはならない。宝くじを引く思いで頑張るしかないんですけど、人間の力ではどうしようも出来ない部分が結構あったりします。なので4年後、皆さんに無事できましたと言える確率は、実は結構低いです。一方で、再生した土地で造られたワインは、すごく質の良い火山灰土壌から生まれたワインとして有名なものもたくさんあります。ほんと、宝くじを引いている気分に近いですね。」
今回の植樹会には、これから島で農業をやりたいという20代の若者も参加していました。若い世代の存在は、荻原さんにとって大きなエネルギーになっています。
「心が折れそうになることもありますが、島で農業をしたいという若い人たちがいると励みになりますね。年齢的には最後のチャレンジですが、若い人たちのパワーを借りて、楽しみながら取り組みたいと思います。」
私たちが参加した植樹会で植えた苗木が果実を実らせるまでには、最低でも4年かかります。大島の厳しい気候でも、ブドウがすくすくと育ってもらえるように、これからも東京都離島区は荻原さんの活動を応援していきます。
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