

好きだから、伝えたい。move! izuoshimaが届ける“自分らしい島旅”のすすめ
2025年2月〜3月に開催された「第70回 伊豆大島椿まつり・大島桜ウィーク」。伊豆大島の暮らしや文化を支えてきた椿の存在を幅広い世代に知ってもらうため、私たちは新たなアプローチを模索していました。
その中でコラボをお願いしたのが、Instagramを中心に、観光客ならではの視点で大島の情報を発信し続ける「move! izuoshima」のなっつさんとばーぐさんです。

彼女たちが手がけた『十人十色 × 伊豆大島 旅レシピ』『波浮港でやりたい30のコト』『椿グルメ特集』は、“自分らしい島旅”を提案するユニークな取り組みとして、大きな反響を呼びました。
そんなお二人が、なぜ大島に惹かれ、発信を続けるのか。活動の原点から、椿まつり企画の裏側、そして今後の展望までお伺いしました。
『move! izuoshima』誕生のきっかけは、1人の島民との出会い
2020年に始まった「move! izuoshima」は、今年で6年目。
活動のきっかけは、なっつさんがばーぐさんを誘って出かけた、伊豆大島への日帰り旅行でした。

なっつさん「仕事で伊豆大島を取材した際、出会ったのが島民のマッカさんでした。初対面にもかかわらず、困っていた私のために車を出してくれて、ロケハンから取材先の調整まで無償で助けてくださったんです。帰ってからずっと、お礼を伝えたいという思いが心に残っていたのですが、せっかくお礼をしに行くなら誰か誘って行きたいと思い、伊豆大島の雰囲気が好きであろう友人のばーぐさんを誘ったんです。」
ばーぐさん「“動きやすい靴できてね”と言われて集合したら、“今日、大島行くよ”と告げられました(笑)。場所もよく知らないまま弾丸で向かいましたが、船旅もすごく楽しく、なによりマッカさんの温かさが印象的で大満足な旅でした。」
すっかり大島の虜になった2人は、何度も島を訪れるようになりました。地元の人たちと交流を深める中で、「大島にはこんなに魅力があるのに、それがネットではなかなか伝わっていない」と感じるようになったといいます。
ばーぐさん「周りに“大島行ってきた”と言っても、ピンと来る人が少なくて。こんなに魅力的な場所なのに知られていないのがもったいないと思いました。島の方々に良くしていただいた分、その魅力をもっと多くの人に伝えたいという想いから、move! izuoshimaとして発信を始めることにしました。」
活動を通じて気づいたこと
move! izuoshimaのアカウントを見ると、その情報量の多さや、観光ガイドでは拾いきれないような細やかな魅力の発信に驚かされます。彼女たちは、なぜここまで継続して発信を続けているのでしょうか。
なっつさん「よく『なんでボランティアでそんなにやってるの?』って聞かれるんですが、誰かのためにやっているという感覚はなくて。ある時、“なんでこんなにやってるんだろう?”って立ち返ったんです。その時に行き着いたのが、“move! izuoshima という活動があるから、私たちの旅がより豊かになっている”ってことでした。お金では得られない“つながり”を感じられるのも、この活動があるからだと思います。」

椿まつりで届けた、新しい旅の形
今回の椿まつりでmove! izuoshimaの2人が手がけたのは、訪れた人が“自分らしい旅”を楽しめるよう工夫された3つの企画。それぞれ異なる切り口から、大島の新たな魅力を引き出してくださいました。
中でも多くの来場者の足を止めたのが、「旅レシピ」と名付けられた展示。10種類のターゲットに分かれた“旅レシピカード”から自分にあったプランを選べるこの仕掛けは、普段InstagramのDMで行っている旅の個別相談から着想を得たものだといいます。

▼『十人十色 × 伊豆大島 旅レシピ』は伊豆大島ナビでも掲載しています。
十人十色 × 伊豆大島『旅レシピ』
2025年2月2日〜3月16日の43日間の期間にわたり開催された『第70回 伊豆大島椿まつり』。イベントの総合案内所(メイン会場)・元町港船客待合所に設置された特設展示ブースにおいて大人気だった観光案内カード『旅レシピ – izuoshima TABIRECIPE』を今回特別に伊豆大島ナビでもお届けすることになりました!
ぜひ、あなたに一番近いタイプを見つけて、大島への旅行の際の参考にしてみてください!
ばーぐさん「私たちのSNSでは、旅行を予定している方からDMをいただくことがよくあります。そのたびに、相手の希望や条件を丁寧に聞き取り、自分たちの視点でおすすめの場所を紹介してきました。
その経験をもとに、10人の異なるペルソナを設定して、それぞれに合った旅のプランを“レシピ”という形で提案しました。旅のヒントになるだけでなく、実際に持ち帰って楽しめる“お土産感”も大切にしました。手に取ったカードが、また島を訪れるきっかけになったら嬉しいなと思っています。
また、お店を紹介するにしても、その人に合わせた一言や、自分たちなりの視点を添えるようにして、今回はそのこだわりを10パターンで表現しました。」
なっつさん「もともとは“伊豆大島を楽しむモデルコースを2-3個ほど展示して欲しい”という依頼でした。しかし、いわゆる王道コースを紹介するだけなら、島の人でもできるよねって話していて。私たちにしかできない旅の提案ってなんだろう?と何度も話し合って、この形にたどり着きました。」
このこだわりの詰まった企画は、観光客にとどまらず、島民の間でも話題になりました。開催中、ばーぐさんは特に印象的な出来事があったといいます。
ばーぐさん「私たちが“大島のヴィレヴァン”と呼んでいるお店があるんですが、今回の旅レシピをきっかけに、多くのお客さんがそのお店を訪れてくれたという話を聞いたんです。このカードがきっかけで、島を巡ってもらえたらいいなという想いが、本当に実現したことが嬉しかったですね。」
“自分らしい旅”という切り口で、訪れる人々に島の新たな魅力を提案した「旅レシピ」。
もうひとつ注目を集めたのが、move! izuoshimaの2人が“推しエリア”として発信してきた波浮港での企画『波浮港でやりたい30のコト』です。

なっつさん「2019年に初めて波浮港を訪れて以来、何度も通う中で、少しずつ変化していく街並みやお店の様子に魅力を感じていました。だからこそ、波浮港地区は私たちにとっての“推しエリア”であり、これまでも意識的に発信してきた場所なんです。」
椿まつりの中心会場から波浮港地区までは、車でおよそ20分。観光客が足を運びにくい距離であるからこそ、「どうすれば波浮港に訪れてもらえるか?」を考えた2人は、従来の観光マップとは異なるアプローチに取り組みました。
なっつさん「観光客にとって大事なのは、“行った先で何ができるか”という体験の部分。限られた旅の時間の中で、わざわざ行く価値があるかどうかが判断材料になると思ったんです。そこで、『波浮港でできること』を視覚的にわかりやすく伝えるビジュアル形式にしようと考えました。」

さらに、情報の載せ方にもお二人ならではの工夫が込められていました。
なっつさん「あえて住所や地図を載せなかったのは、“ちょっと現地の人に聞いてみようかな”と思ってもらいたかったから。旅先でのちょっとした会話が、その旅の印象を大きく変えることってありますよね。」
さらにこの企画は、冊子掲載にとどまらず、地元のガイドさんと連携したツアーにも発展していきました。
なっつさん「実は制作の段階から、地元のガイドさんにご協力いただいていました。やりとりを重ねる中で『この内容をツアーにできないか?』と声をかけていただいて、実現に至りました。現地の方々と一緒に作り上げられたのも、この企画をやって良かったと思えたことのひとつです。」

見る、巡る、出会う。
そんな旅の中で欠かせない要素として、「食」もまた、move! izuoshimaが大切にしてきたポイントのひとつです。
なっつさん「『椿グルメ特集』は、これまでSNSで紹介してきた投稿をもとに企画を考えました。旅先ではやっぱり、その土地ならではのものを食べたくなるじゃないですか。これまでの椿まつりは“観賞”が中心でしたが、“食”でも楽しめることを提案できたのは良かったと思っています。」

掲載された店舗の一部では、今回の椿まつりをきっかけに新メニューを考案する動きも見られました。SNS映えする料理という切り口は、島内の方々にとっても新たな発想のヒントとなったようです。
なっつさん「“椿をどう取り入れよう?”と、店主の方々が工夫を凝らしてくれたのが印象的でした。観光客に“撮ってみたい・食べてみたい”と思ってもらえるようなメニューが増えていったのも嬉しかったですね。」
move! izuoshimaの次なる発信のかたち
Instagramでの情報発信にとどまらず、昨年は「もうやんカレー246渋谷店」でのポップアップイベントなど、さまざまな取り組みに挑戦してきたmove! izuoshimaのお二人に、これからの展望を伺いました。
なっつさん「昔からブレていない私たちの活動の目的は、大きく2つあります。ひとつは、大島を知らない人に“知ってもらうこと”。近場で旅をしようと思った時に、箱根や熱海、日光などと並ぶ選択肢に伊豆大島が入ったらいいなと思っていて、内地でのイベントなどにも力を入れています。

もうひとつは、“大島に行くことが決まっている人”に対して、旅をもっと楽しんでもらえるような情報を届けること。満足度の高い旅にしてもらって、“また行きたい”と思ってもらえるようにしたいですね。その2つを活動の軸として、これからも色々なことに挑戦したいと思います。」
「2人ともおせっかいが好きなんです。」と笑いながらも、島に何度も通い、話を聞き、自分たちの言葉で発信を続けてきたその姿勢は、島内外に多くのファンを生み出してきました。
最近では、伊豆大島のことを知ってもらうためのお土産づくりも構想中なんだとか。これからも、2人にしかできない発信を通して、旅と島と人をつなぐ架け橋であり続けてくれるはずです。
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