あるべき未来の描き方

 2022/08/08

大島・ハワイ島姉妹島盟約60周年記念行事を通じて見えてきたサステナブルな未来

2022年7月28日から30日までの3日間に渡り、ハワイ島よりハワイ郡長ご夫妻はじめご一行が大島に来島されました。大島町とハワイ島は1962年2月に姉妹島の盟約を交わして以来、交流を重ねながら今年で60周年を迎えました。それを受けて大島・ハワイ島親善交流協会主催による60周年記念式典が大島で開催されることとなり、合わせてさまざまな記念行事が行われました。その中で大島町とハワイ島それぞれにおける取り組みについての発表と意見交換会が開催され、私も大島観光協会関係者として参加してきました。

今回はそんな意見交換会を通じて様々な気づきを得たので、私、東京都離島区編集長の千葉が個人的視点よりレポートしたいと思います。

意見交換会のテーマは「大島・ハワイ島における自然との共生と災害への取組」。大島町とハワイ島それぞれの取り組みについて担当者より発表後、質疑応答形式の意見交換を行う流れになっていました。実際はそれぞれの取り組み発表に多くの時間が割かれたため、参加者同士でのリアルな意見交換はあまりできなかったのですが、それぞれの取り組みを深く知ることができたこと、そこから様々な気づきが得られたのはよかったと思っています。

「自然との共生」から学ぶこと

大島町からは、伊豆大島ジオパークと、現在地域調査を進めている浮体式洋上風力発電の取り組みについての発表が各担当者より行われました。

伊豆大島ジオパークは、私たちが暮らしている大地の成り立ちや特徴をよく知り、その地域だからこそ育まれた景観や動植物を大切な宝物として守り、そして、そこで育まれた人々の暮らしを大切な宝物として守りながら、教育・防災・産業振興などの取組みに上手に活用していく活動であることが伝えられました。

大地を特徴づける地質・地形・地理といった土台の上に動植物からなる生態系が生まれ育まれてきたからこそ、私たちの暮らしや文化をはじめ様々な営みが生まれ育まれてきました。だからこそ、それらの成り立ちや関係性などをしっかりと理解し、考え、活かしていくことが大切です。近年は先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態であるVUCAの時代と言われています。日常的に観光・防災・教育・産業といったあらゆる分野を包括した取り組みであるジオパークのような理念に基づいた活動を繰り返し回しながら予期できない未来への準備を進めていくことがより必要となってきています。そんな活動を積み重ねてこそ、しなやかに対応できる能力「レジリエンス(resilience)」が備わってくるのだと思います。

ジオパークはユネスコが進めるプログラムですが、ジオパーク活動を通じて自らの地域をよく知り、しっかり共有し、大切に保全しながら活用していく。そんなサイクルを回しながら自然との共生、サステナブルな地域の実現と魅力化、地域に関わる人々のシビックプライド醸成へとつなげていく。持続可能性をベースに発展的な地域へと成長させていくための活動であると理解しています。

言葉の持つ力

ハワイ島からの取り組みで印象的だったのは「ポノ(Pono)」という言葉からはじまる啓蒙活動です。「ポノ」は「アロハ」のようにとても深い言葉で、たくさんの意味を持った深い精神性を持った言葉です。その言葉には「調和の取れた状態」「正しい判断」「責任ある行動」といった意味があり、様々な取組を進めていく際の指針のような役割を担っています。

意見交換会の冒頭で流れたハワイ島の紹介動画の中で「ポノ」が登場していました。近年、観光における課題としてよく取り上げられるレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)をテーマとした動画で、多くの観光客が訪れることで地域や環境、そしてそこに暮らす人々のコミュニティへの負荷を高めてしまう問題に対して、「ポノ」の言葉の持つ意味を通じて観光客もツーリズムの構成要素として意識や行動に責任を持つことの大切さを伝えています。

ハワイに暮らす人々にとって深く馴染みのある「ポノ」という言葉に集約させて伝えていること、常に人々の意識の中に持っておくことができる受け入れやすい言葉を使うことで、それぞれの心に持つべき責任を定着させていくことにつながります。

社会的意義ある行動への転換

そんなハワイでは再生可能エネルギーによる電力供給の取り組みが進んでいて、2045年までに電気を再生可能エネルギー100%にする目標を掲げています。その中心を担っているのがハワイ州の人口95%に電気を販売するハワイアン・エレクトリック社です。

日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げましたが、ハワイ州は、2045年までに販売する電気を100%再生エネルギー由来とすることを義務付けました。それに伴い、2020年末までに30%、2030年に40%、2040年に70%という中間目標も定めています。

海に囲まれ、石油への依存度が高いハワイ州ですが、近年の気候変動に伴う環境破壊からハワイの貴重な自然環境を守りたいという想いと、社会情勢等先行きの読めない石油輸出国からの影響を受けにくい状況にするとともに、経済成長へと繋がる策となる再生可能エネルギーへの完全転換は、リスクを恐れ、既存の環境の中でカイゼン的なアプローチにとどまる「既存市場の最適化」から抜け出し、社会的意義のある持続可能な戦略として大きく舵を切った意義ある決断です。

気になる中間目標の達成度ですが、2020年の再生エネルギー調達比率は35%と目標をクリアしており、今後の中間目標及び2045年の調達率100%の目標達成は十分可能との予測を出しているそうです。また、再生可能エネルギーの多様化も進めていて、太陽光発電や風力発電に加えて地熱、水力、バイオマスなど様々な電力供給手段を整えて、その構成比率を増やしていくことで、気候条件に左右されない、しなやかな電力供給体制の構築が可能となります。さらに、つくりだした電力を蓄えておく蓄電池を整備、組み合わせることで、よりサステナブルな電力供給システムの構築へと展開できます。そんな環境負荷のないクリーンな社会に向けて、ハワイは大きく動いていることを知りました。

多様化が導くレジリエンス

大島からは浮体式洋上風力発電による脱炭素化ビジョンについての紹介がありました。

深い海域の多い日本において、再生エネルギー化に向け最大のポテンシャルを有し、台風にも強いとされる浮体式洋上風力発電の活用が求められており、その導入・活用に向けて環境省が公募した調査に大島町が応募、採択され、現在は大島沖が浮体式洋上風力発電の適地となり得るか調査が進められています。

調査とともに導入に向けて漁業関係者・旅客・観光事業者・港湾管理者・国立公園・伊豆大島ジオパーク・島内電力会社といった様々な関係者との調整が必要であり、一つ一つ丁寧に調整が進められているそうです。

大島町が今回の事業に取り組む背景としては、島内の主電力を1カ所の内燃力発電所に依存している点、大型台風等による直撃により停電が頻発している点、船の欠航により燃料供給が滞り発電所が停止してしまう点、カーボンニュートラルに向けた再生エネルギー導入の機運が高まることで従来の内燃力発電所の維持が困難になる点、それに伴う発電事業者の採算性の悪化などがあげられていました。

大島町の脱炭素化計画は以下4つのフェーズに別れています。

フェーズ1:準備段階

現在はこの段階で、地域調査業務を行なっています。

フェーズ2:実証段階

内燃力発電ユニットの1つを4,000kW級グリーン燃料対応車載型ガスタービンに更新します。

フェーズ3:水平展開

風力発電や太陽光発電、EV導入を順次進めていき、風力発電による一部エリアの脱炭素化や実証モデルの水平展開を行います。

フェーズ4:全島展開

実証モデルを島内全域へと展開し、内燃力発電所を廃止。脱炭素Islandとしてグリーンガスの島外販売を目指します。

離島地域はその特性上、非常時の孤立化や長期化が懸念されており、再生可能エネルギー化は急務とされています。また、送電線網がシンプルな構成であったりする点から導入が有利な面もあります。非常時のエネルギー供給におけるレジリエンス強化も大切な視点で、今回の浮体式洋上風力発電の他にも、大島町においてすでに導入が進められている太陽光発電といった再生可能エネルギーの他に蓄電池や発電機などを組み合わせることで、リスクの分散化が図れます。

今回の意見交換会において国や地域を超えてお互いの取り組みについて語り合うことで、同じ離島という地理的状況において、火山や台風といった自然の脅威に晒されている状況や、電力供給の多様化の必要性といった課題は、共有すべき話題であり、さらにジオパークの取り組みや「ポノ」を起点としたレスポンシブル・ツーリズムの考え方は双方にとって学びある活動であり、参考にすべき発見だったようです。私も多くのことを学ばせていただきました。

スペキュラティブ・デザインで描くあるべき未来

テクノロジーの急速な発展や、予測を大幅に超える自然災害や環境変化が起こる中、未来はますます予測不可能なものになっています。これまでの価値観や常識をベースとした考え方では世の中の変化に対応しきれなくなってきている中「スペキュラティブ・デザイン」という概念が生まれています。未来を予測する際にその視座を広げるとともに批判的に探索することで新たな問いが生まれ、その問いを追求することによって固定観念を超えた発想へと到達できるというものです。

今回の意見交換会で知ったハワイの再生可能エネルギー100%への取り組みの一連の流れは、現状を批判的に捉え、あるべき未来を描くことで固定観念を超えた新たな問いを立てることにつながり、既成概念を超えたイノベーションへとつながる「スペキュラティブ・デザイン」的発想プロセスと言えるのかもしれません。地域の未来を考えるにあたり、視座を広げて大胆な仮説を立てていくことでイノベーションを引き起こす。スペキュラティブ・デザイン的発想プロセスは今後予測不能な未来を切り開く上で有効となる新たなデザイン手法と言えるのかもしれません。

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