消えゆく島の養鶏業を守るべく、新たな担い手を
ー 伊豆大島の養鶏業の現状 ー
日本人にとって身近な食材「卵」
卵といえば、食生活において欠かせない食材です。卵焼き、目玉焼き、スクランブルエッグ、ゆで卵など、どれも簡単に調理ができてお手軽に食卓に出すことができます。また、パンやケーキなどのお菓子作りにも欠かせない材料です。そんな卵には多くの栄養素が含まれており、身体に良い影響を与えてくれる欠かせない日常食材です。例えば、たんぱく質は身体の細胞や筋肉の修復に必要な栄養素であり、卵黄に含まれるビタミンDは、骨の健康に役立ちます。さらに、卵白に含まれるリジンは身体の組織を修復するのに重要なアミノ酸です。
卵といえば、2023年3月末に千歳の養鶏場で確認された鳥インフルエンザの影響により全国的に卵が品薄状態に陥り、ブラジルからの輸入なども進んでいるとニュース等で話題になっており、安心・安全な卵の需要はさらに高まっています。
私も関わっている伊豆大島の農産物直売所「ぶらっとハウス」では鶏卵は商品として並ぶのはもちろん、プリンや焼き菓子などの様々な加工品の製造に欠かせない素材として日々使用されています。さらには伊豆大島の伝統的な特産品である牛乳煎餅にも卵が使用されていて、地域を特徴づけるご当地食材としても大切に守り、育み、残していきたい大切な食材でもあります。
しかしながら、高齢化とともに人口減少が進む伊豆大島において、一次生産者の数も減少の一途をたどっており、今では10%を下回る厳しい状況が続いています。そんな状況の中、養鶏業者さんの数も例外ではなく、その数は片手で数えられるほどにまで減ってしまいました。
養鶏業者が抱える現実
今回ご紹介する篠原養鶏さんは1,500羽ほどが飼育できる島内では比較的大きな規模の鶏舎を所有する数少ない養鶏業者さんで、農産物直売所ぶらっとハウスをはじめ、島内の様々な業者さんに商品を卸している貴重な生産者さんです。しかしながら、事業主である篠原さんが数年前に体調を崩されて以降、思うように体が動かせないことから経営に支障をきたすようになってしまいました。今では廃業を考えるようにもなり、残念ながら事業の縮小に着手しはじめています。このままでは島内から養鶏業者さんがいなくなってしまう。日本人にとって馴染み深い、身近な食材である卵が島内で自給できない状況が今まさに生まれようとしているのです。
篠原さんはそんな状況にはしたくないと、今日まで必死に頑張って来られました。しかしながらすでに80歳を超える高齢且つ体調も崩されている状況ということもあり、このまま気力だけで乗り越えていくにはあまりにも過酷な状況です。さらに追い討ちをかけるように飼料代の値上げラッシュが止まることを知らない勢いで続いており、経営そのものが立ち行かない状況となっています。
「自分がもう少し若くて元気があればインターネット等、効率性をあげる手段を色々試したり活用したりして販路拡大や経費削減等、さまざまな工夫ができるのですが、この歳になるとなかなか体が思うように動かなくて難しいのです。」
と肩を落としてお話しされる篠原さんの姿が印象的でした。
養鶏の魅力と離島における一次産業が持つ課題
篠原さんが養鶏をはじめたのは平成18年のことでした。当時約2,000万円の資金を投じて設備を整えてスタートした養鶏業、生きものがとにかく好きだったという篠原さん。そんな大好きな生きものである鶏を愛情を込めて育てることで、私たちに日々豊かな生活を与えてくれる。そんな感謝の思いから、自分よりも生き物優先の生活を続けてきました。毎日最適な飼料の配合を考えながら調整したり、鶏舎の環境をいろいろと変えてみたり、さまざまな試行錯誤を重ねていくことで、鶏たちは卵の味で必ず答えを返してくれる。そんなやりとりが最高に面白いし、やりがいがある。さらにはお客様から「美味しい」と言っていただけるのがこの上なく嬉しいし、やっていてよかったと思える瞬間なのだそうです。
そんな養鶏の醍醐味の一方で、離島における生産者の置かれた状況は厳しさを増すばかりです。とても人件費を賄うまで余裕のある仕事とは言えない現実。そんな状況の中、篠原さんは人一倍働くことでなんとか乗り越えてきました。今後、養鶏を持続可能な経営として成立させていくためには、新たな発想や仕組みを考えて導入していく必要があります。そのためには新たな人材が必要です。
「課題を可能性に変えたい」新たな担い手を探しています。
今回ついに廃業を決意された篠原さん、このままでは廃業に向かって進んでいく一方です。そうなると見逃せないのが、篠原さんの卵を使って加工品を製造される事業者さんの存在です。篠原さんもそんな事業者さんの存在にとても悩み、苦しまれています。なんとか新たな担い手を見つけて、継続させたい。大切な取引先の皆様を安心させたい。事業承継先が見つかるのであれば、篠原さんは所有される全ての設備を無償提供するとまでお話されています(土地は貸与)。
他の地方と同様に少子高齢化により都市部以上に人口減少や産業衰退が続く伊豆大島。課題先進地とも言える離島で、少しずつ消えていく人々の営み。どの営みにも長い時間をかけて地道に培ってきた担い手の知恵や想いがたくさん詰まっています。消えてしまったらもう二度と取り戻せないのです。
この現実を一緒に前向きな方向に変えていく仲間を探しています。ぜひ、興味のある方はご連絡いただけたら幸いです。
※多数のお問い合わせを頂いている為、一旦受付をクローズいたします。(2023年9月13日)
篠原さんの養鶏業を引き継ぎたい、もしくは、本気で前向きに考えてみたい、という方は東京都離島区のお問い合わせフォーム、もしくは、『info@ritoku.tokyo』までメールにてご連絡ください。お問い合わせ状況によってはご希望に添えられない場合もありますので、あらかじめご了承下さい。
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