『竹芝MGM協議会 島しょ振興Working Group in 大島』視察レポート
2025/12/20
島への玄関口・竹芝。
都市の景色が広がる東京湾からレインボーブリッジをくぐり、船が外海へ出ると、火山の大地、森の匂い、そして人の営みが息づく東京の島々が出迎えてくれます。
同じ東京でありながら、まったく異なる表情を持つ竹芝と島しょ地域。
この二つが交わることで、どんな新しい価値が生まれるのか。
その可能性を探る一歩として企画されたのが、今回の『島しょ振興WG in 東京諸島』です。
今年度は総勢23名が参加。大島を実際に巡ることで、今後の連携に向けた具体的なヒントが次々と見えてきました。
本記事では、2日間の視察を振り返りながら、「竹芝×島しょ連携」の可能性を紐解いていきます。
冬の気配が漂う島で、お出迎え
この日の到着港は岡田港。
港では、早朝に大型船で来島していた一部の参加者が、他の参加者を出迎えてくれました。
都心の夜景を眺めながらゆっくりと向かう大型船、あるいはスピーディーで快適なジェット船。どちらを選んでも、移動そのものが特別な体験になるのは島旅ならではの魅力です。
参加者全員が合流し、最初の目的地である「Izu-Oshima Co-Working Lab WELAGO」へと向かいました。

竹芝エリアを知る時間
はじめに、TIAMの千葉よりWELAGOについてご紹介。
Izu-Oshima Co-Working Lab WELAGOは「都市と地方の共存社会を、多様な働き方から描く」を掲げた拠点で、今年は日本で初めてコワーキングスペース向けの環境認証「WELL Coworking Rating」を取得しました。
竹芝と島しょ地域の関係性とも親和性の高いこの場所で、『自己紹介&竹芝を知るワーク』を行います。
今回の参加者は竹芝を拠点に活動する、アトレ竹芝、ソフトバンク、七島信用組合、東急不動産、鹿島建設、竹芝エリアマネジメントのメンバーです。互いの背景や取り組みを共有することで、この後の視察に向けた土台が自然と整っていきました。
続いて、竹芝エリアマネジメントの前田さんから、竹芝の歩みについてのお話がありました。

竹芝地区のまちづくり構想は10年以上前からスタートし、現在の姿に至るまで、多くの議論と試行錯誤が重ねられてきたそうです。10年以上続く「竹芝夏ふぇす」や6回目を迎える「竹芝みなとフェスタ」など、まちづくり当初から続くイベントが今も竹芝を支えている背景には、最初に一歩を踏み出した人たちの存在があります。
こうした背景に触れることで、竹芝というエリアが歩んできた道のりと、その現在地を改めて感じることができました。
いよいよ、大島のフィールドワークへ
昼食を終え、午後はいよいよ大島の自然を体感するフィールドワークへ。

伊豆大島ジオパーク認定ガイド・神田さんの案内のもと、裏砂漠と、今年リニューアルした伊豆大島ミュージアム「ジオノス」を巡りました。
裏砂漠は、日本で唯一「砂漠」と認められている場所。
三原山の噴火で積もった黒いスコリアに覆われ、歩くたびに足元から心地よい音が響きます。

この日は天候にも恵まれ、裏砂漠から本土が見渡せるほどの視界。
「竹芝はどのあたりだろう?」と声が上がるほど、澄んだ空気が広がっていました。
続いて訪れたジオノスでは、大地の成り立ち、生態系、島の暮らしや文化を多角的に学べる展示を見学。参加者は一つひとつの展示に足を止め、熱心に見入っていました。

竹芝のリソース × 大島の価値で描く“ファーストアクション”
フィールドワークを終えたあとは、その体験をもとにワークショップへ。
半日かけて感じた大島の価値を言葉にし、竹芝と島しょ地域をつなぐための「ファーストアクション」を考えていきました。

「壮大な景色に圧倒された」
「時間の流れがまったく違う」
そんな率直な感覚を共有しながら、次に竹芝側のリソースを整理。
すでに行われている取り組みをどう活かせるか、活発な意見交換が行われました。
せっかくなら島の人にも聞いてもらおうと、この日の懇親会で各チームのアイデアを発表することにしました。
〈一部をご紹介〉
「2足のわらじでわくわくワークプラン」
都心で働くワーカーが月の半分を島で過ごすことで、ウェルビーイングと島の人手不足の双方に向き合う仕組み。

竹芝歩行者デッキを活用した島PR
将来的に浜松町駅と直結する歩行者デッキを活用し、島の魅力や竹芝周辺の飲食情報を発信する構想。七島信用組合による写真コンテストとの連携案も挙がりました。
どのアイデアにも、竹芝の視点と島での体験が掛け合わされ、今後の連携の可能性が具体的に描かれていました。

竹芝の皆さんをお出迎え。夜は特別なディナーへご招待
一日の締めくくりは島民を交えた懇親会。
会場は、昨年波浮港にオープンした担々麺kUi。
オーナーの尾形さんが、この日のために特別なメニューを用意してくださいました。

大島町や七島信用組合の島民ゲストも加わり、食事を囲みながら自然と会話が弾む時間に。立場を越えて交流が生まれる、あたたかな夜となりました。
大島の循環を支える、2つの事業者を訪ねて
2日目は、「大島の循環」をテーマに事業者訪問へ。
最初に訪れたのは、島の人々の暮らしと深く結びついてきた椿の循環を次世代へつなぐ重要なピースを担う、株式会社東京備長の平井さんです。
昨年に炭窯を建設し、椿を使った備長炭の製造に取り組んでいます。

現在、日本の森は適切に手入れされないまま年々深くなり、林業の衰退によって伐採が行われないことで、さまざまな環境問題が生じています。
平井さんは、椿の備長炭づくりを通して、こうした環境の循環を取り戻しながら、同時に経済的な価値も生み出す「環境と経済の両輪を回す事業」を実現しようとしています。
また、椿の備長炭で食材を焼くことで生まれる「おいしさ」についても、科学的な視点を交えながら丁寧に解説していただき、参加者は興味深く耳を傾けていました。

続いて訪れたのは、特定外来生物・キョンのジビエ化に挑む河原さん。
これまで捕獲後に焼却処分されてきたキョンを、「命の恵みとして最後までいただくことはできないか」と考え、19歳でジビエ事業を立ち上げました。
解体現場も見学させていただきながら、参加者は命をいただくことの重みや、食と向き合う姿勢について改めて考える時間となりました。

最後には、キョン肉のハンバーグを試食させていただき、ジビエ特有の臭みを感じさせないその味わいに、参加者からは驚きの声が上がっていました。
2日間を振り返って
あっという間に過ぎていった2日間。
最後は全員で振り返りの時間を作りました。

参加者からは、
「これまでも竹芝では島しょの食材を使ったイベントを行ってきたが、生産者の顔が見える企画をしてみたくなった」
「島で暮らす人に実際に出会うことで、価値の伝わり方が大きく変わると感じた」
といった声が聞かれました。

竹芝と島しょ地域の関係性は、これからも続いていきます。
今回は大島での視察でしたが、東京の島々には11の有人島があります。
島が変われば、見える風景や感じる価値もまた大きく変わるはずです。
ぜひ、次は別の島にも足を運んでいただけたら嬉しく思います。
今回生まれた熱量を一過性のものにせず、竹芝と島しょ地域がお互いに歩み寄りながら、竹芝の魅力向上、そして新たな連携の可能性を、これからも探り続けていきたいと思います。
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