

新たなつながりの萌芽『島じまダイアローグ』 開催レポート
2025/04/19
東京の島々は南北1,000kmにわたって広がり、それぞれが独自の風土、文化、そして島ならではの暮らしを育んできました。この多様な個性を持つ島々がつながることで、より豊かで魅力的な未来が描けるのではないでしょうか。
この可能性を広げるきっかけとして、島と島、人と人とが緩やかに結びつく場『島じまダイアローグ』を企画・開催しました。大島、新島、三宅島、八丈島、青ヶ島から集まった10名の仲間たちが八丈島に一堂に会し、互いを知り、理解を深める貴重な時間を共有しました。
このレポートでは、ひとつの島に集い、語らい、想いを共有することで芽生えた新たなつながりの萌芽をお届けします。
始まりは優婆夷宝明神社から
雨模様だった前日から一転して、気持ちよく晴れ渡った八丈島。何か新しいことが始まりそうな清々しい気持ちとともにスタートした「島じまダイアローグ」は、八丈島の総鎮守・優婆夷宝明(うばいほうめい)神社からスタート。日本神話に登場する事代主命(ことしろぬしのみこと)の妃・八十八重姫と、その子どもである古宝丸を祀る、由緒ある神社です。

境内には、まるで龍のように今にも動き出しそうな生命力溢れるソテツの木が育ち、亜熱帯性気候に属する八丈島ならではのエネルギーを感じさせてくれます。参加者全員で拝殿を前に手を合わせ、これから始まる出会いに静かに願いを込めました。

玉石垣から学ぶ、人と人の支え合い
次に訪れたのは、玉石垣が美しく並ぶ大里地区。
この玉石垣は、かつて流人の手によって、遠くの海岸から重たい石を人力で運び、ひとつひとつ丁寧に積み上げられたものだと言われています。苔むした石垣の風景からは、長い年月と労力の積み重ねが感じられます。

今回の案内役を務めてくださったのは、大里地区にアトリエを構えるグラフィックデザイナー/映像ディレクターのフルタヨウスケさんと、同地区横間エリアにサロンを構えるロミロミセラピストのTAROさん。お二人のご案内で、大里地区を歩きました。

そして、お二人のご紹介で、島の園芸家であり、玉石積みの技術を受け継ぐ菊池國仁さんのもとへ。菊池さんは、八丈島を代表する花卉園芸種である「フェニックス・ロベレニー」の栽培を手がけながら、玉石垣の修復にも携わっています。

「ただ石を並べるだけでは、強い石垣はできません。大事なのは、それぞれの石の“性格”を見極めて、ぴったりと収まる場所を見つけてあげることなんです。」
丸くて奥行きのない“弱い”石があれば、周囲の石や上に置く長い石でしっかりと支えてあげる。そんなふうに、石が互いに補い合って強さをつくっているのだと語ってくださいました。この積み方は「六方積み」と呼ばれ、人と人との関係にも通じると菊池さんは言います。弱い部分を支え合いながら、ひとつの形をつくっていく。まるで、島の暮らしそのもののように感じました。
最後に、菊池さんが八丈島の民謡『ショメ節』を披露してくださり、こぶしの効いた歌声が大里の風景に響き渡ると、自然と手拍子が始まり、一体感が生まれました。島の歴史とともに育まれてきた暮らしの知恵と誇りに、深く触れるひとときとなりました。
なぜ私は島にいて、そして、どこへ向かうのか
昼食後はいよいよ、今回のメインプログラムであるワークショップの時間。会場は、緑に囲まれた心地よい空間「八丈島ボタニカル&カフェ DRACO」さんです。定休日にもかかわらず、私たちのためにスペースを貸してくださったことに、この場をお借りして感謝を申し上げます。

ワークの冒頭には、鹿児島・甑島を拠点に先進的な島づくりを行っている「東シナ海の小さな島ブランド株式会社」代表の山下賢太さんにご講演いただき、鹿児島の離島で生まれている新しいつながり「鹿児島離島文化経済圏」(通称:リトラボ)を中心にお話しをしてくださいました。
『挑戦』すべては未来へつなぐために
2022年9月、私たちは鹿児島県薩摩川内市甑島へと足を運びました。旅の目的は甑島の風景や日常を守り未来へ繋げようと日々奔走する東シナ海の小さな島ブランド株式会社の代表を務める山下賢太さんにお会いするため。
特に印象的だったのは、大きな動きも、最初は「目の前の人との信頼関係を、丁寧に育て続けること」から始まっているとおっしゃっていたこと。当たり前のようですが、忘れがちな心構えを、改めて気づかせてくれるお話でした。
山下さんの講演が終わった後は、いよいよ個人の発表タイムです。
参加者一人ひとりが、「なぜ私は島にいて、そして、どこに向かいたい(向かう)のか」という、あらかじめ設定されていた問いに向き合い、5分間のプレゼンを行いました。
島における自身の在り方を模索中の人もいれば、すでに行動に移している人も。けれど、その根底には「これからもこの島が、豊かな暮らし・営み・自然とともに続いていってほしい。そのために私ができることは何か?」という共通する問いや想いがあったと感じています。その想いが、島に関わるすべての人をつなぐ力になるのだと改めて感じました。

今回の『島じまダイアローグ』は、まず島を超えて”集う”ことに大きな価値を持つと感じています。普段はそれぞれの島で活動しているプレイヤーたちが、同じ時間と場所を共有し、同じ目線に立って対話をすることで、新しい視点や気づきを得ることにつながったのではないかと思います。
「島の未来を誰かに委ねるのではなく、自分たちの手で少しずつ形にしていく」という自覚と、意志とともに生まれてくる希望が感じられる尊い時間でもありました。
これからもTIAMはここから生まれた小さな連携の芽を、大切に育てていきたいと思います。
最後に、
今回の機会を企画するにあたり心強い後押しをして頂いた、
一般社団法人離島総合研究所 代表理事の上田 嘉通さん
東シナ海の小さな島ブランド株式会社 代表取締役のヤマシタケンタさん
そして、株式会社ヒトカラメディア、株式会社ゼブラアンドカンパニー関係者の皆様に、
心より感謝いたします。
ありがとうございました。
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