コレクティフという希望 — 島で起きる小さな変身を集める
2026/01/03
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
年末年始は子どもがインフルエンザに罹患し、出かける予定を急遽キャンセルして自宅で過ごすことになりました。
おかげで本を読んだり、ジョギングしたり、近所の温泉に浸かったりと、仕事から少し距離をとって、心身を整える時間を持つことができました。

WEBメディア「東京都離島区」はこれまで、東京諸島に関わる人々のライフプロジェクト※に着目し、当事者はもちろん、その周辺を取り巻く環境や関係性に眼差しを向けながら取材・記事を発信してきました。
※ライフプロジェクト:自分自身の内面から湧き上がる興味・価値観・願望を原動力とし、自己実現や成長、充実感を追求するために自発的に立ち上げられるプロジェクト(活動)
その活動を通じて、新たな関係性を築くきっかけを生み、個人のなかで起こる衝動の“起動”をそっと後押しする。そして、それぞれのライフプロジェクトがつながり、やがてソーシャルイノベーションへと発展していく…、そんな豊かなサイクルを回し続けていくことに寄与したいという願いがあります。
このスタイル自体は、(今のところ)今後も大きく変わらないと思っています。ただ、時代も社会も、もちろん島々も変化し続けるなかで、メディアとしての眼差しや実践はアップデートしていきたい。
そこで今年は、これまでの軸にもうひとつ、意識的に重ねたいテーマがあります。
それは、オルタナティブ(別のやり方・あり方)を、形にすることです。
アップデートのヒントを探すなかで、年末年始に宇野常寛さんの『庭の話』を読みました。ここで得たことを、自分なりに噛み砕きながらシェアしてみたいと思います。本書で強く印象に残ったのが、精神科医ジャン・ウリの提唱する「コレクティフ(collectif)」という概念です。
それは、構成員である個々人が自分の独自性を保ちながら、しかも全体に関わっていて、全体の動きに無理に従わされることがない状態を指します。

この「コレクティフ」という言葉が持つ意味を東京諸島に重ねてみると、理想的な地域の在り方について、いくつかの輪郭が見えてくる気がしました。
ここで対比されるのが、強く結束した「グループ」です。
グループは力にもなりますが、同時に同調圧力を生みやすい。内と外をつくり、境界線が引かれ、声の大きい側が空間の空気を決めてしまう。
その結果、弱い立場の人は忖度し、自分の想いを解放できないまま、いつの間にか「機械化」してしまう。
このジレンマは、昨今の情報社会、とりわけSNSのタイムラインにも通じます。
日々移り変わる潮目に漏れないように、無意識に同調する。そこで起きる相互承認の快楽はインスタントで、けれど同時に、誰かを除外する力としても働いてしまう。
では、その外側に出るためにはどうすればいいのか。
宇野さんはここで、強い共同体の承認の交換を介さずに、個々人が「事物」に向き合える場の必要性を語ります。
宇野さんは、その場を「庭」と呼びます。そして「庭」の条件として、次のようなことを挙げています。
- 人間と事物がコミュニケーションをとる場所であること
- 事物たちの生態系が豊かに存在していること
- 人間はその場所に関与できるが、支配できないこと
- 事物の側から人間にコミュニケーションが取られること
- コミュニケーションが人間を不可逆に「変身」させること
- 人間を孤独にすること
この「孤独にする」という条件が、個人的にはとても腑に落ちました。
ここでいう孤独は、切り離されることではなく、同調圧力や相互承認の渦から一度離れて、自分の輪郭を取り戻すこと。
その輪郭を取り戻したうえで、あらためて人や事物と関係を結び直すこと。「庭」とは、そのための装置なのかもしれません。

東京の島々には、まだまだ生身の関係性のなかで、新しい意味や選択肢が立ち上がる余地が多分にあると感じています。
だからこそ今年は、島のなかにある「庭」のような場所や時間、そこで生まれる小さな変身を、これまで以上に丁寧に拾い、紡ぎ、ひらいていきたい。
東京都離島区がやりたいのは、誰かを一つの正しさに集めることではなく、それぞれの独自性を保ったまま関われる「コレクティフ」の感覚を、島の現場から育てていくことのお手伝い。
東京都離島区は今年、そんな「庭」をイメージしつつ、一年をスタートしたいと思います。
取材の相談だけでなく、芽の段階の話も歓迎します。
島で起きているさまざまな事物に対して、“新たな視点”や“別のやり方”含めてイメージしつつ、いっしょにかたちにしていけたら嬉しいです。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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